みなさん「香道(こうどう)」という言葉を聞いたことがありますか?
じつは香道とは「茶道」・「華道」と並ぶ日本の三大伝統芸道のひとつなのです。
香りに意識を向けて静かに心を澄ませる――そんな繊細で奥深い世界が広がっています。
香道の起源は平安時代にさかのぼり、仏教とともに伝わった香の文化がやがて貴族や武士たちの間で洗練されていきました。
室町時代になると香を聞き分けて楽しむ「組香(くみこう)」などの形式が生まれ、芸道としての香道が確立されます。
戦国時代には織田信長や豊臣秀吉といった武将たちも精神を整える手段として香をたしなんでいたと伝えられています。
香道には現在二つの主要流派があります。
室町時代後半に将軍足利義政が三條西実隆・志野宗信に香の学び方を組織化するよう命じました。
三條西実隆公の流れをくむ「御家流(おいえりゅう)」、志野宗信公の流れをくむ「志野流(しのりゅう)」です。
前者は公家風を、後者は武家風を根底としています。
ここからもう少し香道について簡単に説明をしてみますね(^^)/
香道の基本 〜香りを「聞く」ということ〜
香道の基本的な所作は「聞香(もんこう)」と呼ばれます。
香道ではお香の香りを“嗅ぐ”のではなく“聞く”と表現します。
香木を細かく刻んだものを聞香炉で温めてその香りを順番に聞き分けていく、という非常に繊細な作法です。
そしてこの香木の香りは香道の世界では「六国(りっこく)」という六つのタイプに分類されています。
◆ 六国(りっこく)― 香木の六つの香り
- 伽羅(きゃら)
香木の中でも最高級とされる香り。甘さ、辛さ、渋みなどが絶妙に調和していて、深く品格のある印象です。 - 羅国(らこく)
辛みが強く、少し鋭さのある香り。すっと通るような印象を持ちます。 - 真南蛮(まなばん)
薬のような重厚さを感じる香り。ややクセはあるけれど、心に残る奥行きがあります。 - 真那賀(まなか)
やさしい甘みがあり、ふんわりと包み込まれるような香り。 - 佐曽羅(さそら)
軽やかでさっぱりとした印象。どこか落ち着きのある香りです。 - 寸聞多羅(すもたら)
個性の強い香りで、どっしりとした重みを感じさせます。
◆ 五味(ごみ)― 香りを“味わう”感覚
香道では香りを“味”にたとえて表現する方法もあります。
それが「五味(ごみ)」と呼ばれる考え方です。
- 辛(しん) … キリッと鋭く、通りがよい香り
- 甘(かん) … まろやかでやさしい印象
- 酸(さん) … すっきりとした爽やかさ
- 鹹(かん) … 少し塩味を感じさせるような、落ち着いた印象
- 苦(く) … 渋みや奥深さを感じる香り
※五味の解釈は流派によって相違があります。
この五味を意識して香りを聞くと「これは少し甘いかな」「苦みがある気がする」など、自分の感覚に向き合う楽しさが生まれてきます。
正解・不正解ではなく、自分がどう感じるかを大切にできるのも香道の魅力のひとつです。
実際に体験して感じたこと
わたしが香道を知ったのは、図書館で本を借り漁っていた時期にたまたま出会った本で読んだときでした。
日本の三大伝統芸道のひとつに『香道』というものがあると知りとても興味がわき、すぐに都内で体験ができるところを探していってみました。
それから今までに7回ほど体験会に参加しているのですが、そこでは季節に合った「組香」という香りを使った“香りの遊び”が開催されています。
前々から嗅覚には自信があったので、香りを聞き分けるのは簡単だろう、と思っていたのですが…
香木の香りはとても繊細で、最初はなかなか聞き分けるのは難しかったです(>_<)
でも回を重ねるごとに、少しずつ“香りを感じる力”が育ってきたように思います。
自分の感覚を信じて「この香り、なんだか甘い気がする」「少し渋いかも」など、自分の感じ方を大事にできるようになってきたのかもしれません。
聞香炉が自分の前に置かれると、自然と背筋が伸び、香りに意識を集中することで頭の中がすっと整理されていくような感覚もあります(*^^*)
組香では当たりハズレももちろんあるのですが、それよりも香りを楽しむことを重視しています。
高価でなかなか手に入らない伽羅など、貴重な香りを聞けるとても贅沢な時間なのです。
香道の最後には、先生が「香、満ちました」といって終わるのですが本当にその通りで香の香りで部屋のなかも、心のなかも満ち足りた状態になるのです。
帰りの電車は自分から香ってくるお香の香りも相まってとても心地よい気分です(*^^*)
現代の生活って、つい目や耳から入る情報に追われがちですが、香道では普段あまり意識しない”嗅覚”に意識を向けることができ、普段とはまた違った感覚を持てることがとても面白いと思っています😊
それがとても心地よくて、定期的に通いたくなる理由のひとつなのかもしれません。
初めて体験する方はたぶん「こんな不思議な世界があるのか!」と驚くと思います。
とても独特で結構ニッチな世界ですが、興味持たれた方はぜひ一度体験してみてほしいと思います(*^^*)
終わりますー♪